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ザ・ビートルズ史精読1

マーク・ルイソン「ザ・ビートルズ史<誕生>上下」 原題「ALL THESE YEARS:tune in」

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名著「ザ・ビートルズレコーディングセッションズ」の著者によるザ・ビートルズ伝記の決定版。上下2巻で1600ページの厚さにもかかわらず、1962年のセカンドシングル盤「Please Please Me」のレコーディング状況までしか書かれていない。どれだけ内容がドープであるか想像がつくでしょう。

表表紙はこれ。上下揃えないと帯がジョンとジョージのギター組とリンゴとポールのリズムセクションに分かれて悲しいことになるから上下揃えるのはマスト。

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上下1600ページの中には

若さがあり、友情があり、気のおけない仲間意識があり、競争があり、ライバル意識があり、あらゆる種類のセックスがあり、地球上類を見ない成功があり、どん底の下積みがあり、家族の情愛と反目があり、階級があり、貧困があり、カッコイイ車があり、ジュークボックスがあり、嫉妬があり、shitがあり、尊敬があり、美味しそうなイギリス料理があり、美味しそうなビールのあるイギリスのパブがあり、曇った空があり、詩があり、詞があり、死があり、別れがあり、盗みがあり、徴兵制度があり、戦争があり、空襲があり、焼け跡があり、カトリックとプロテスタントがあり、酒があり、海があり、船があり、船乗りがあり、航海があり、後悔があり、母があり、父があり、叔母があり、叔父があり、兄弟があり、家族があり、現代アートがあり、写真があり、美術があり、彫刻があり、漫画があり、TVがあり、ジェームスディーンとマーロンブランドがあり、近眼があり、サングラスがあり、コメディがあり、毒舌があり、辛辣なユーモアがあり、差別的ジョークがあり、ヒトラーとナチスジョークがあり、IRAがあり、チャーチルがあり、シェイクスピア劇団があり、イギリスの演劇があり、ホモセクシュアルがあり、自傷があり、不倫があり、英国紳士があり、色悪があり、万引きがあり、不適合があり、売春があり、ドラッグがあり、悪徳があり、興行があり、音楽ビジネスがあり、レコーディングスタジオとレコーディング技術の革新ががあり、著作権があり、駆け引きがあり、音楽ジャーナリズムがあり、楽器の腕比べがあり、革ジャンからスーツへの変貌があり、リーゼントから斬新でキュートなヘアースタイルへの変身があり、入り組んだ三角関係があり、子供があり、少年があり、青年があり、少女があり、崇拝があり、ファンとアーティストがあり、グルーピーがあり、イングランドがあり、スコットランドがあり、アイルランドがあり、ジャガイモ飢饉があり、コメディレコードがあり、コメディアンがあり、童貞があり、喪失があり、処女があり、喪失があり、恋があり、結婚があり、出産があり、馬車馬のような働きがあり、ホモソーシャルがあり、マッチョイズムがあり、精神の危機があり、ルイスキャロルがあり、アメリカ南部があり、口喧嘩の達人があり、即興詩人があり、逃避があり、立ち向かう心があり、偉大なる性的魅力があり、退屈があり、殴り合いの喧嘩があり、チンピラがあり、華麗なる貧困からの脱出があり、確執があり、馘首があり、地元意識があり、風来坊があり、探求があり、ふざけあいがあり、信頼があり、笑いがあり、涙があり、ハンブルグがあり、リバプールがあった。

そして何よりもその中心には、エレクトリックギターがあり、ベースがあり、ドラムスがあり、ピアノがあり、ビートがあり、リズムがあり、メロディがあり、コードとハーモニーがあり、ウィットに富んだ歌詞と声とシャウトがあり、たくさんのロックンロールとリズムアンドブルース、ブラックポップ、少しのラテンとライトクラシックとスキッフル、もっと少しのジャズがあり、エルヴィス、リトルリチャード、チャックベリー、ラリーウィリアムズ、バディホリー、コースターズetcの初期ロックンロールの聖人たちの音楽があった。そうその中心には何よりも音楽があった。

 


イースト葛飾春風の森司法書士事務所 司法書士麻嶋修
事務所所在地
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FAX:047-413-0403

忘れ去られていくこと1 昭和歌謡は強く日本のロックは弱い

平成29年の春,忘れ去られていくこと。

先日放送の日本テレビ「ヒルナンデス」毎週金曜日の「有吉弘行の超限定マーケティング」のコーナーで,「20代30代に聞いた名前に「春」の字ある有名人」という特集があった。そのランキングの20位以内に,三波春夫と春日八郎が入っていた。このランキングの順位にどれだけの信憑性があるのかは分からないが,この結果には驚いた。お二方とも佐野元春より順位は上,近田春夫や春日博文はかすりもしていなかった。昭和歌謡は強く日本のロックは弱いということか,いや,そりゃまあ,春日博文はないだろうけれども。角川春樹や春日太一も入っていなかった。

大滝詠一読本完全保存版 別冊ステレオサウンド

大滝詠一読本完全保存版を購入。

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聞いてみたくてたまらなくなる音源がいくつか紹介されていた。

湯浅学による駒沢裕城インタビュー(P18)

湯浅「(前略)アルバム『ゴー!ゴー!ナイアガラ』の発売記念ライブ(76年10月7日日比谷公会堂)の時,アンコールが終わってもほとんどの客が残っていて,後幕が上がって片付けが始まってもまだ帰らない。そこに大滝さんが出てきて,「よーし,待っとれ」と言って駒沢さんを連れてきて,ふたりだけで「空いろのくれよん」をやった時があって,それはもう感激しました。その時自分でこっそり録ったテープは,今も大事にとってあります。」
駒沢「ああ,その時のことはよく憶えています(笑)(後略)」

うおおおおおお。

湯浅学「NIAGARA 45RPM VOXを聴いて」P48

『「幸せにさよなら/ドリーミング・デイ」はナイアガラがコロンビア配給になってからの最初のシングルで『ナイアガラトライアングルVOL.1』リリース時に,伊藤銀次,山下達郎,大滝詠一の3人が一同に会したナイアガラ・トライアングル名義の唯一の録音。実際はそれぞれ別々に(一回でOKだったという)歌ったトラックをミックスしたもの。3人で公けに歌ったのは,76年3月29日東京芝のABCホールでの「ナイアガラ・トライアングル発売記念コンサート」の時だけだった。』

ああああぃいいいいい,ゆ,湯浅さん,このコンサートの音源も持ってるんでしょう?

湯浅学「大瀧詠一提供作/プロデュース作」P169

『70年代のナイアガラが開店休業の時にその音頭ものにとんでもない怪提供作が生まれる。雑誌『ビックリハウス』が歌詞を公募,大滝が作・編曲・プロデュースを手がけた「ビックリハウス音頭」だ。歌うのは読者の女子高生3人組=デーボ。様々なロック・ポップス・童謡・民謡その他のフレーズをたたみかけるようにつぎはぎした、「レッツ・オンド・アゲン」のイントロをさらに発展させた折り込みものである。今ならサンプリングでやることを,”すべて”人力でやってのけた,とんでもないミュージック・コンクレート作品でもある。ジョン・オズワルドの「Plexure」を聴いたとき,真っ先に思い浮かべたのがこの「ビックリハウス音頭」だったことは強調しておきたい。』

ジョン・オズワルドとビックリハウス音頭の結び付け,これぞ湯浅学の面目躍如たる文章だ。この「ビックリハウス音頭」の音源はニコニコ動画で聞くことが出来るが,ぜひとも「レッツ・オンド・アゲン」に収録して欲しい。ジョン・オズワルドの「Plexure」も聞きたくなってしまった。

「別冊ステレオサウンド」次回の特集は,ルディ・ヴァン・ゲルダーとのことで,これも多分買うことになるだろうが,それにしても,このムックを購入した人の男女比と平均年齢を知りたいものだ。